医療法人社団 榎会 榎本クリニック医療法人社団 榎会 榎本クリニック

デイナイトケアセンター

薬物デイナイトケア

薬物依存デイナイトケアは、覚醒剤・大麻・危険ドラッグ・一般処方薬・市販薬など、合法、非合法を問わず薬物に依存している人を対象にしています。これは、依存症の3種類型(物質依存・行為依存・人間関係依存)のうち物質依存に該当します。

薬物依存、特に非合法なものについては、これまでは司法の場で裁かれることが中心でした。ただし、それは治療的な関わりではなく、「罪を犯した」ことに対する「罰」という考え方がもとになっています。

1. 薬物依存症とは

行為・プロセス・依存

当クリニックでは、あくまでも「治療」という視点で考え、グループの中で自らの対人関係を見つめ直し、「なぜ依存症になってしまったのか?」「ひょっとして、どこかに生きづらさを感じているのではないか?」こうした点を一緒に考えていくことで、治療の方向性を本人とスタッフが一緒になって考えていきます。

「止めなければいけないのを分かってはおいるけど止められない」そういったある物や事、あるいは人に対しての耽溺、やめられない悪習慣のことをアディクション(嗜癖:しへき)と言います。アディクションの概念は大変幅広く、重症例になってくると「依存症」と呼ばれます。7F、8F、9Fアディクションデイナイトケアでは、下の表の中で薬物依存症を対象とした治療を行っています。

感情の天秤、症状の天秤

やめたほうがいいと分かっていながらも自分の行動や感情がコントロールできず、社会生活の破綻へと向かっていく。これらの症状は=感情の表現であり、嗜癖の天秤構造で現す事ができます。

2. 治療の三本柱

わかっていてもやってしまうのが依存症の特徴です。そこで、普段から自分を支える柱を用意しておくことが非常に大切です。

1:定期的な通院・服薬

定期的に通院することで、病気のチェックと規則正しい生活リズムをつけていきます。そしてミーティングに参加しながら自己の生き方に気づき、新しい楽な生き方を学んでいきます。そして自分のことを周囲に理解してもらいながら、よりよい人間関係のネットワークを築いていきます。
また、長期的に薬物を使用していた方の特徴として、フラッシュバックをはじめ、不眠や気分障害、幻覚・幻聴などの症状が後遺症としてある場合も少なくありません。そのような場合、服薬をして自己の調子を整えるのも治療の土台の一つとなっていきます。

1週間のプログラムの例
午前

ミーティング

感情教室

お料理教室

メンバー
ミーティング

ミーティング

ミーティング

午後

芸術行動療法

男女別
ミーティング

芸術行動療法

スポーツ

手工芸

誕生会

芸術行動療法

ナイト

ミーティング

カラオケ・ゲーム

ミーティング

就労支援
プログラム

キャンドル
ミーティング

エノリックス

振り返り

ミーティング

※プログラムは治療の段階にあわせて月ごとに変わります。
※午前は10:30〜12:00、午後は13:30〜15:00、ナイトは18:00〜19:00です。

2:ミーティング(自助グループ)

当院では通常のミーティングに加え、男女別ミーティング、自治会ミーティング、心の健康ミーティングなど、色々な種類のミーティングを積極的に開催しています。ミーティングは、他者との関わりの中で自分自身を見つめなおし、お互いに自発的に問題解決の道筋を探すための重要なプロセスです。まずは、自分にとって居心地のいいミーティングに参加することから始めましょう。

3:自分のことをオープンにして知ってもらう

ミーティングなどの様々なプログラムを通じて、「安全な」時間と空間を共有することで、自分をしっかりと見つめなおしつつ、周りの人たちにありのままの自分を受け入れてもらうことが大切です。

主なプログラムの紹介
  • ミーティング

    依存症の治療において、最も基本かつ重要なプログラムです。「安全な」時間と空間(グループ)の中で、自己を見つめ、自分の感じていることを語り、それがありのままに受け入れられる体験をしたとき、人は楽になり、本当の自分を取り戻していきます。

  • 男女別ミーティング

    上記のミーティングを男女別で行うものです。同性のみで構成されたグループでは「安全性」が増し、男性ならでは、女性ならではの悩み・辛さを吐き出し、より楽になれる体験が可能です。

  • メンバーミーティング

    上記のミーティングをフロアのメンバーを中心に行うものです。メンバー主体ならではの話が出たり、メンバー同士の支え合いが生まれたりします。同じ痛み・悩みを抱えるもの同士だからこそ分かり合え、楽になれる場になっています。

  • エノリックス

    米国で開発された薬物依存症からの回復プログラムです。認知行動療法・動機付け面接・自助グループなどで用いられている「12ステッププログラム」など、多様な要素を取り入れた治療システムは米国連邦厚生省によって実証的に治療効果があるとされ奨励されています。

  • 芸術行動療法

    他のフロアと合同で、部活動のような活動をしています。和太鼓(池袋、飯田橋)、よさこい(池袋、新大塚)、エイサー(御徒町)、ボクシング・空手(池袋、飯田橋、大森)、フラダンス(飯田橋)、フットサル(池袋)等他では体験出来ないプログラムがあるのも特徴です。他にも音楽療法、卓球、ゲートボール、ヨガ、レクリエーション(テーブルゲームやグループゲーム)等、その時の気分に合わせて多彩なプログラムに参加することが出来ます。
    和太鼓・よさこい・エイサー・フラダンス等は、内部・外部での発表の場も設けており、明確な目標を持って取り組むことが出来ます。

  • 感情教室

    喜怒哀楽さまざまな感情に焦点を当て、それらの感情を適切に表現する方法を獲得したり、感じることの大切さや表現することの大切さを学んだりするプログラムです。また学ぶだけでなく、時には感動する映画を観て泣いたり、時には大笑いをしたりすることで溜まっていた感情をスムーズに表出させ健康を回復するプログラムです。

  • カラオケ

    自分の好きな歌、得意な歌を順番に歌います。歌う人は、歌詞やメロディーに乗せて気持ちをこめて歌うことで感情表出を促すことができ、また、大きな声で歌うことでストレス発散も出来ます。また、周りで聞いている人は、ほかの人の歌を聞くことによって気持ちがリラックスし、楽しめるようになります。

  • お料理教室

    スタッフやメンバーで決めたメニューを皆で協力して作ります。複数人で行う料理は自然と役割分担が生れます。その中で過剰にお世話したくなる人、グループに入れない人、無理して周りに合わせてしまう人など、個々の持つ対人関係の傾向が見えてきます。そこへ上手にアプローチすることで、自己への気づきを深め、スムーズな人間関係を作れるようになります。

  • スポーツ

    バレーボール、ソフトボール、テニスなどを主に行っています。チームワークが必要なもの、個人対抗で行うものなど、状況に応じて様々な人間関係作りが行われるのがスポーツの場面です。ついつい出しゃばってしまう人、なかなかチームに入れない人、うまくまとめようとする人、それぞれの行動から対人関係パターンを探り、スムーズな交流が出来るようになっています。

  • 手工芸

    主にスポーツと並行で行われます。身体的な理由によって身体を動かすことが苦手な人がフロア内の装飾を作ったり、バザーなどで販売する自主制作品を作ったりしています。完成のイメージをふくらませながら作品を一から作ることによって、想像力を高め、脳の老化を防ぎます。

  • 就労支援プログラム

    パソコンの使い方やマナー講座などを行い、社会復帰に向けての初歩的な技術や知識を身につけていきます。

芸術行動療法

3. 回復への道筋

風邪は病気であり、意志や根性でどうにかなるものではないように、依存症も病気であり、意志や根性や約束でなんとかなるものではありません。病気ですから病気に対する治療をしていけば、必ず回復できるのです。
ここでは、事例を通して薬物依存症の治療について簡単に紹介したいと思います(ある事例を基にしたフィクションです)

事例:新藤さん(仮名・男性/27歳)

薬物依存症

新藤さん(仮名・男性)は27歳の会社員である。大学時代、友人の持っていた脱法ドラッグを軽い気持ちでやったが、数回使用しただけでそれほど気にはしていなかった。

就職し、27歳で営業部の主任となった。同期では一番のスピード出世で新藤さんは張り切っていた。しかし部の業績も個人の業績も伸び悩み、新藤さんは上司から責められ、部下を叱咤せざるを得ない時は特に胃が痛かった。次第に新藤さんは孤立感を強めていった。

会社帰りふと立ち寄ったクラブで女性のグループと知り合う。酒に酔っていたこともあり軽いノリでマリファナをやった。過去に脱法ドラッグを使用したが、全く依存にはならなかったという自信もあった。しかし数ヵ月後、新藤さんはクラブに入り浸り、金を工面して様々な薬物をむさぼっていた。そして覚醒剤所持で捕まるまで時間はかからなかった。

その後保護観察付きで榎本クリニックでプログラムを行うことになる。最初は拒否的だったが、グループには自分と同様に薬物をやめられないで悩んでいる仲間がいるということが勇気になっていった。「幼い頃両親が離婚し、父親に育てられた。しかし父親は家に女性を連れこみ新藤さんには居場所がなかった。しかし頑張って大学に進学した。そして大学在学中に父はアルコールの飲みすぎで亡くなった。それからも一人でずっと頑張ってきた。でももう頑張りきれない」と新藤さんはグループの中で涙を流した。

今まで外に語る事の無かった気持ちを少しずつ語るうちに、新藤さんの表情に明るさが戻ってきた。1年間のデイナイトケアの後、現在就職活動をしている。しかしたまに来るフラッシュバックのために、毎晩の自助グループ通いと、定期的な通院は欠かさない。また、地域の保健師が新藤さんのケースカンファレンスに毎回参加し、地域での新藤さんのよき相談役になっている。

なぜ新藤さんは回復できたのでしょう?

  • 仕事を休職し、治療に専念できる状態を作った。
  • グループやミーティングに継続的に参加した。
  • 問題を隠すことなく担当者に話すことができていた。
  • 就職活動中も治療を第一として3本柱を継続できた。
  • 地域の保健師など、新藤さんを取り巻く関係者が同じ方針のもと関われた。
要するに、治療の3本柱を一貫して行えることが、一番の回復の秘訣なんですね。

4. ご家族の皆様へ

健康的な関係性を取り戻すために

アディクション問題を抱えた人が家庭にいると、いつ問題を起こすのかと本人に対し腫れ物に触るかのような対応になってしまいます。このような緊張した関係を本人は敏感に感じ取り、「自分は家族を緊張させてしまうダメな奴だ」と自分を責めます。自責感はまたアディクションに向けられ、その結果家族はまた緊張していきます。このようなことが永遠と繰り返されるために、家族も関係者も尻拭いに走りまわったり、やってしまったことを責めたり、もう二度としないなどと約束させたりします。

ここで問題なのは本人ではなくその関係性です。健康的な関係性が生まれてくれば、本人の自責感も消えていき、症状も消えていきます。健康的な関係性を取り戻す為には、まず家族や関係者の病気の正しい理解と、ほっとすること、楽な気持ちになることが大切です。ご家族、ご関係者の皆様には是非家族グループへの参加をお勧めします。この場で少しでもほっとすることで、本人の症状はかなり回復に向かってきます。

薬物家族会のご案内

薬物家族会は毎月第3土曜日の午後4時から開催しています。ぜひご家族や関係者の皆様でお気軽にご参加下さい。

開催日時:毎月第3土曜日 16:00〜
開催場所:トータルケア3F(榎本クリニックの隣のビル)