治療への姿勢

現在、高度に発展した成熟社会に心の癒しを求めて心的バランスを失い、適応障害として心の問題や悩みや病気(現代病)を抱えている人々は数多くいると推測されます。(精神科を受診する人は320万人以上であり、その何倍もの人々が心の問題で悩んでいます。)
榎本クリニックでは、一人一人に対してどのような経緯で受診に至ったのか、積極的傾聴に努め、一方的な説明によって治療の理解を得るのではなく、十分に話を聞いた上で提供できる治療の選択肢を提示し、その人にとって適切な治療を考えて頂けるように働きかけています。そして、問診・初期面接を経て、効率的かつ円滑に診療が行われるように努めています。

現代社会のニーズに応える精神医療

社会変動とともに

社会変動とともに、精神治療・疾病構造も大きく変化しています。
かつては統合失調症中心の入院治療の精神医療でしたが、現在では外来通院治療、デイナイトケア治療へと転換をとげてきているのです。
最近の傾向として、不安と抑うつ傾向、脅迫的傾向、自己愛的傾向の主訴・相談が増え、その結果、アディクションの精神病理としてのアルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症、性依存症、摂食障害、リストカット、児童虐待やDV、さらには自殺願望等々の受診が目立って増えてきています。そして人間関係の葛藤(会社内、夫婦間、異性間等)を自分で解決できなくなった人々の「人生相談」も増加しているのです。
現代社会のニーズに応えるべく、それぞれの精神疾病に適した、専門分化したデイナイトケア治療が必要となってきています。
疾病の症状・特徴が異なれば、アプローチも違ってきます。また、年齢が違えば関心の対象も行動も異なるので、その年齢層にふさわしい治療プログラムを工夫する必要があります。特に、パーソナリティ障害、アディクション障害、発達障害や新型うつ病等の現代病をもっと積極的に受け容れて、治療・相談することが望まれます。

デイナイトケア治療の専門分化

榎本クリニックでは、入院治療に代わる社会療法として、デイナイトケア治療を疾病別・年齢別に専門分化した構造を展開してきました。これにより、治療目的も明確となり、デイナイトケア運営も適切に運ぶことができ、治療効果も合目的的に果たすことができるようになりました。
そのため、デイナイトケア治療は入院治療の次のステップの治療過程と考えられる傾向にありますが、これからの日本の精神医療は、もはや入院治療することなく、専門デイナイトケア治療で十分果たしていけるのではないだろうかと考えます。
今後、グローバル社会における精神医療のさらなる発展・前進を支援して参ります。

治療の原則

生活の質(QOL -quality of life-)

豊かな社会になり、数多くの人々がさまざまなアルコールを多量に飲んでいます。そしてアルコール依存症に陥り、断酒生活の為「アルコールフロア」に通っています。アルコール依存症に陥った人々は、断酒すると生命よりも大事な酒(生き甲斐)を失ってしまいます。
また、薬物依存症、キャンブル依存症、性依存症等の人々も「アディクションフロア」に通ってきています。彼らも関係対象依存行為(心の癒し)を求めて耽溺し、社会生活に破綻しています。
これらの依存症等に陥った数多くの人々は、関係対象依存行為(心の癒し)を止め(させられ)ると、魂を失ってもぬけの殻となってしまいます。さらに、セルフコントロールできず、社会不適応をおこし、挫折し、悩みを「悩み」として向かい合わず、「病気」として捉える若年層の「新型・自称(社会的文化)うつ病」が急増しています。彼らは「社内うつ」で、社外では友人と楽しく遊び、自ら「うつ病」と称して診断書を求めて来診するのです。彼らの生活の質(QOL)をどのように考えたらよいのでしょうか。

アメとムチと生きるモデル

従来の薬物療法だけでは効果はあがりません。自ら社会体験し、学習し、洞察、自覚し、人間的に成長し、立ち直るしかないのです。
治療の原則はアメ(母性原理)とムチ(父性原理)と生きるモデル(自己原理)が必要です。アメというのは優しくすることです。愛情優しく保護しなければいけません。昔は慈母と言われていました。ムチは厳しさを教えることです。つまり、甘えさせてばかりいたら人間は自立できなくなってしまうのです。そしてモデルは、自分の生きがいを見つけ、自分の身の丈にあった自分の生き方を自分でみつけていくことです。
アメとムチとモデル。この3つがそろわないと、人間は成長しないのです。