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About daynightcareデイナイトケアとは(当院の治療方針)
榎本クリニックでは「精神科デイ・ナイト・ケア」に特化した診療体制をひいています。デイナイトケアは薬物療法と並ぶ「心理社会的療法(精神科リハビリテーション)」という、社会復帰・地域への復帰を目的とした治療の場です。
デイナイトケアとは

生活リズムの構築をまず第一に
精神科デイナイトケアの標準時間は「1日10時間(当院は9時~19時)」です。毎日のように決まった場所・決まった人(グループ)・決まったタイムテーブルで過ごすことは、入院のような「保護的」な環境になり得る一方で、生活のリズムを作っていく「刺激」にもなります。
当院では、目的や目標に合わせ、曜日を決めて通院(月~土の最大週6日)していただくことで、次のステップに進むための土台である生活のリズム構築を先ず第一にしています。
イメージとしては学校のような感じで、クラス(疾患別フロア)があり、チャイムで1日の時間割(治療プログラム)が進んでいくようになっています。
1日のタイムスケジュール例
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9:00
来所バイタル測定、服薬、診察
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10:00
ラジオ体操
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10:30
プログラム
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12:00
昼食(食事プログラム)、服薬
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13:30
プログラム
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15:00
掃除・フリープログラム、
個別対応(買い物補助、金銭管理、生活指導など)、シャワー浴(希望者) -
17:00
プログラム
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18:00
夕食(食事プログラム)、服薬
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19:00
帰宅
当院の治療方針

集団活動を治療の中心に
どの疾患でも共通して出てくるキーワードは「人間関係」です。
当院のデイナイトケアは、一人でのんびり過ごすというより、グループでの活動を主体としています(コアタイムの活動時間は「プログラム」と呼んでいます)。
「毎日(外に出て)人に揉まれる」ことは、仕事・学校・障害福祉サービスや介護保険サービスに至るまで、生活の至る場面で発生します。
もちろん個々人のペースに合わせた参加の仕方を検討しますが、集団からの程よい刺激(ストレス)も治療要素の一つだと考えています。
疾患・年代別フロア
当院では基本的に疾患(病名・症状)別・目的別・年代別などの、
似た悩みを抱えた方ごとにグループを分けています。
目的(例)
プログラム(集団活動)を特徴・ニーズに合わせた専門性の高いものにする
目的や属性が似ている人で集まることで患者さんが通いやすくなる
他の場所では話せないような悩みや困りごとを共有できる場をつくる
疾患・目的別
治療の大きな狙い(一例)
白衣を着た専門職よりも、時と場所を共にする仲間の実体験を共有し合う方が、実感した学びになりやすいものです。
フロア選びも、上記のような目的・目標に合わせ、かつフロアの雰囲気やスタッフとの合う合わないなども考慮しつつ、続けて通いやすいフロアを決めていきます。
治療体制
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精神科専門スタッフが
常に居る環境当院に関わらずですが、精神科デイナイトケアは精神科医・看護師・相談員/ソーシャルワーカー(精神保健福祉士)・心理スタッフ(公認心理師/臨床心理士)など、医療・心理・福祉の専門職によって集団活動が提供されています。
様々な視点で常に「見立て」をすることで、問題解決に向けたより多くのヒントが得やすくなり、悪化時にも早期発見につながりやすくなります。
特に、当院の主治医と話す際に、日頃から関わっているスタッフが間に入ることで、自分では話せない詳細な情報も精神科医に伝えやすくなることや、診察で伝えたいことをスタッフと事前に相談することも出来ます。 -
活動状況に合わせた薬物調整
当院によくいただくお問い合わせの中に「薬は使わないということですか?」というものがありますが、他の病院・クリニックと同じく薬物療法も治療の柱の一つだと考えています。
もう一つ、集団活動と薬物関係は影響し合い補完し合う、欠かせない柱だとも考えています。
例えば、当院では入院から出て来たばかりの方の薬が増える、という現象がよくありますが、これは「集団活動で刺激が増え、生活の自由度も上がったから活動的になって、一時的に症状が強く出ている」可能性が考えられます(あくまでも一例です)。生活や活動の状況で、良くも悪くも症状は変化します。
集団活動を提供し、いつも一緒に過ごす専門職(スタッフ)が見立てをし、主治医と協力をすることで、地域生活をしていく上で本当に必要な薬や活動の量を一緒に考えていきます。
再発・再入院防止だけでなく、働くために必要なことは何かを考える上でも、活動状況に合わせた薬物療法は重要だと考えています。 -
特徴的なプログラムや
季節イベント本物の大太鼓を使ったプログラムや、プロのトレーナーを招いたボクシングプログラムなど、精神科としては一風変わった活動を提供しています。
また、季節のイベントも大きな会場や舞台を用意し、大規模に行います。
集団生活は良くも悪くもストレスがあり、また、リズムの良い生活は「飽き」も来やすいものです。
緩急をつけ「非日常」を体験することで、リズムの中にも変化を起こし、治療継続を支える要素となっています。
トータルケア
当院では滞在時間の長さを活かし、生活上の困難さを抱える患者さんに対し、
生活全般をサポートする「トータルケア」をモットーとしています。

具体的には、無料送迎をはじめとして、服薬管理(最大朝・昼・夕の与薬や他科薬もまとめてフォロー)、食事2食無料提供、金銭管理(飲酒防止など治療上必要な方のみ)や買い物同行、シャワー浴などの清潔保持、自宅へ訪問してのサポート、スタッフが実際に把握している生活・活動状況を診察に活かす体制など、長時間デイナイトケアに滞在する中で生活の視点からもサポートをしていきます。
また、地域のサービスを使う際にも、当院でサポートしている情報や、医療的な見立てを共有することで、症状に合わせた必要なサービス量を一緒に考え、よりよい連携を図っています。地域での支援場面で問題が出やすい方は、デイナイトケアに参加することがサービスを受ける練習になります。
手厚いサポートは「今後自分で出来なくなる」という心配をされがちですが、治療の進行状況とともに自分で出来るように・サービスに移行することで、ステップアップを実感しやすいという側面もあります。
始めからこういったサポートが必要無い方に対しても、生活の視点を常に持ったスタッフが見立てをすることで、治療上の見立てが医療的視点一辺倒にならないよう、より社会生活へ戻っていくための「トータル」な視点になるよう心がけています。

個々人の社会復帰の形を目指して
就労・就学・バイト・作業所、アパート生活・グループホーム、支援を受けながらの自立生活・仕事、「社会復帰」「自立」には様々な形があります。
デイナイトケアは、そういった次のステップへ行く足がかりになる「中間施設」です。
依存症
依存から離れた生活リズムの構築と、守られた環境で「欲求」への対処法を学びます(入院よりも自由な分、再燃リスクは相対的に高いですが、働いた時の環境を想定しています)。「まず止めた生活を」目指しているため、週5~6回通う方が多いです。
統合失調症
「症状があっても外に出て活動できる」が目標です。慢性期の陰性症状(感情が乏しくなったり、意欲が低下するなど)が進行しないようにするために活動をします。ゆったりした活動も多いので、入院中の作業療法の延長、と紹介することもあります。
朝・昼・夕の服薬管理など、訪問看護ではケアしきれない部分の対応なども想定しています。
気分障害
(うつ病・双極性障害)
状態にあった活動量のコントロールと、疾患理解とセルフマネジメントが主な目的です。うつの方は回復期に休みすぎるのも良くなく、躁の方は活動しすぎも良くないので、ちょうど良い活動量や、再発を防ぐための生活構築を活動の中で一緒に考えます。
神経症
(パニック、強迫神経症など)
「症状があっても外に出て活動出来る」が目標です。症状を根本的に無くすのではなく、どうやって対処できるのかを考えます。まずは活動や人と関わることで気を紛らわせる、電車が難しい場合は送迎車を使うなど、通えるところが最初の目標です。
高次脳機能障害
機能回復のリハビリを終えた後、日中活動を続けるためにいらっしゃる方が多いです。遂行機能障害の対処法を活動の中で探る対症療法的なリハビリから、長期的に活動を続けることで変化を待つなど、参加の仕方はそれぞれです。復職の判定のために、集団活動で回復度をみていく場合もあります。
認知症
一番は精神科的な視点(思考や認知といった心の機能)から脳への刺激となるような活動をすることで、進行を抑制する狙いがあります。また、周辺症状としての感情の高ぶりを抑える、妄想への対応、服薬調整などを、入院ではなく家での生活と日中活動を保ったまま行うことも目的としています。
自閉スペクトクラム症
(発達障害)
コミュニケーションに困難さを抱える方が多いため、まずは集団で生活を継続できることを優先します。
リワーク・(復職支援)
就労支援
働く時のストレスの高さを想定して、なるべく週5日・10時間(就労時間より長い拘束時間)集団で過ごすことで、まず土台となる体力・ストレス耐性をつけます。その上で、働いた時を想定したストレス対処法を習得する、自分の症状の特徴を理解して自分で生活をマネジメントできるようにしていきます。
ひきこもり
まず外に出て、人が居る場所で過ごせるようにするところからスタートです。ひいては長期的な目線で、就労や他のサービスへスライドするために集団生活の練習をしていきます。ひきこもりの原因となる症状を、集団生活の中で見立てて治療することも並行していきます。
シニア(高齢者予備軍)
メンタルの問題が出ないように、もしくは軽減するために、仕事に近い形で通院して日中の活動を継続します。