「心理社会的治療」というデイナイトケア
薬物療法は当院の治療でも中核の一つではありますが、薬だけでは限界がある部分について、「心理的」「社会的」「文化的」な観点から精神科デイナイトケア治療を行っております。
当院の精神科デイナイトケアの目的と治療目標について
自宅から、でも保護的な環境下で、生活のリズムを構築する
精神科デイナイトケアの標準時間は「1日10時間(当院は9時~19時)」です。
毎日のように決まった場所・決まった人(グループ)・決まったタイムテーブルで過ごすことは、入院のような「保護的」な環境になり得る一方で、生活のリズムを作っていく「刺激」にもなります。
当院では、目的や目標に合わせ、曜日を決めて通院していただくことで、次のステップに進むための土台であるリズム構築が出来るよう努めています。
イメージとしては学校のような感じで、クラス(疾患別フロア)があり、チャイムで1日の時間割(治療プログラム)が進んでいくようになっています。
人に揉まれる環境:集団での活動
どの疾患でも共通して出てくるキーワードは「人間関係」です。
当院のデイナイトケアは、一人でのんびり過ごすというより、グループでの活動を主体としています。
「毎日(外に出て)人に揉まれる」ことは、仕事・学校・障害福祉サービスや介護保険サービスに至るまで、生活の至る場面で発生します。
もちろん個々人のペースに合わせた参加の仕方を検討しますが、集団からの程よい刺激(ストレス)も治療要素の一つだと考えています。
精神科専門スタッフが常に居る環境
当院に関わらずですが、精神科デイナイトケアは精神科医・看護師・相談員/ソーシャルワーカー(精神保健福祉士)・心理スタッフ(公認心理師/臨床心理士)など、医療・心理・福祉の専門職によって集団活動が提供されています。
様々な視点で常に「見立て」をすることで、問題解決に向けたより多くのヒントが得やすくなり、悪化時にも早期発見につながりやすくなります。
特に、当院の主治医と話す際に、日頃から関わっているスタッフが間に入ることで、自分では話せない詳細な情報も精神科医に伝えやすくなることや、診察で伝えたいことをスタッフと事前に相談することも出来ます。
似た悩みを抱えた仲間の力
当院では基本的に疾患(病名・症状)別・目的別・年代別などの、似た悩みを抱えた方ごとにグループを分けています。
治療プログラムを専門分化する目的もありますが、他の場所では話せないような、悩みや困りごとを共有できる場所を目指しています。
白衣を着た専門職よりも、時と場所を共にする仲間の実体験の方が大きな学びとなることも多く、集団にこだわる理由です。
特徴的なプログラムや季節イベント
本物の大太鼓を使ったプログラムや、プロのトレーナーを招いたボクシングプログラムなど、精神科としては一風変わった活動を提供しています。
また、季節のイベントも大きな会場や舞台を用意し、大規模に行います。
集団生活は少なからずストレスがあり、また、リズムの良い生活は「飽き」も来やすいものです。
緩急をつけ「非日常」を体験することで、リズムの中にも変化を起こし、治療継続を支える要素となっています。
社会的な視点での支援
当院では長時間・高頻度での治療を提供し、生活全般をサポートする「トータルケア」をモットーとしています。
ただ、医療機関として出来ることは限られているため、地域のサービス・サポート必要になります。
ステップアップをするための連携ももちろんですが、病状に合わせた必要なサービス量も一緒に考えていきます。
支援場面で問題が出やすい人は、デイナイトケアに参加することがサービスを受ける練習になることもあります。
個々人の社会復帰の形を目指して
就労・就学・バイト・作業所、アパート生活・グループホーム、支援を受けながらの自立生活・仕事、社会復帰は様々な形があります。
デイナイトケアは、そういった次のステップへ行く足がかりになる「中間施設」です。