近年、うつ病・双極性障害や発達障害、依存症などのメンタルヘルスの不調が原因で職場を休職する方が増えています。
特に30代を中心にした比較的若い人に増えていますが、休職から退職に追い込まれるケースも珍しくありません。年齢が上がるに従い、また社会で仕事をしていない期間が長くなればなるほど、就労へのハードルは高くなります。
リワークデイナイトケアでは、メンタルヘルス不調の再発を予防し、安定した就労ができるように支援します。

1. リワークデイナイトケアとは

リワークデイナイトケアの目的

うつ病の症状が軽快し体力が回復すれば職場復帰自体は可能かもしれませんが、これだけでは復職前の状態に戻っただけです。他の疾患でも同様で、例えばアルコール依存症の方が「血液検査の肝臓の数値が戻った」からといって、病気自体が治ったわけではありません。仕事に戻れば、職場では病気になる前と同じストレスがあり、病気が再発する可能性は否定できません。再発しないで仕事を続けるためには、職場で以前と同じようなストレスに出会った時の対応力を、以前より改善しておくことが必要です。リワークデイナイトケアにおいては、生活リズムの安定維持、意欲・集中力の向上に加え、症状に繋がりやすい考え方の修正、復職間際の不安の軽減など、総合的な人間力の向上を目指しています。

数分で終わってしまう外来診療では、患者様の症状が回復したかの判断はできても、本当に現場に戻って働き続けられるかどうかの判断は難しいと言わざるを得ません。また、診察室だけでは見えてこない生活上の問題、飲酒や発達障害等、診断や治療方針に関わる問題が隠れていることもあります。一日の昼間の時間をデイナイトケアという場で治療プログラムに参加していただくことで、外来診療だけでは把握できなかったさまざまなポイントを浮き彫りにすることもできます。

リワークデイナイトケアのメリット

リワークデイナイトケアを体験することで、次のようなメリットがあると考えられます。

1.復職後の生活に合わせた生活のリズムが築ける(通勤、日中の活動など)。

2.共通の悩みを持つ仲間がいることを知り、孤立を避けることができる。

3.具体的な復職準備を整え、モチベーションを上げていける。

4.高密度のプログラムにより、これまでの生き方を多角的に振り返り、様々なストレスに対しセルフマネジメントができるようになる。

5.専門知識を持ったスタッフ(医師・看護師・薬剤師・精神保健福祉士・臨床心理士など)によるチーム医療であり、気軽に相談ができる。

6.当院の依存症治療専門プログラムと並行して受けられる(依存の問題がある方)。

7.リワーク・プログラム卒業後も、土曜日を利用してフォローアップの時間がある。

ご利用方法

1. まずはお電話・メールでお問い合わせください。診察のご予約を取っていただきます。ご相談はご本人様、医師、会社の上司の方、まずはどなたからでも結構です。その際、症状や休職期間等簡単な聞き取りを行う場合もございます。※見学も随時お受けしております。

2. ご利用にあたっては、プログラムへの参加が適当かどうか医師による診察を行わせていただきます(診察の結果、ご利用いただけない場合もありますのでご了承ください)。
所属する会社の産業医の先生や他クリニックの主治医の先生からのご紹介も増えています。産業医や当院以外の医師、会社の紹介で参加ご希望の方は、紹介状をお持ち下さい。

3. リワーク・プログラムの具体的な利用のしかた(日数や時間、プログラムなど)については、主治医やスタッフとご相談の上、その時点での回復の状態に合ったご利用方法を決めていきます。また、主治医を変えないまま、当院のリワークプログラムに参加することも可能です。

費用について

各種健康保険が適用されます。また自立支援医療制度もご利用いただけます。詳しくは各クリニックへお問い合わせください。

2. どんな治療をするの?

復職までのステップ

ストレス関連疾患(うつ病、双極性障害、パニック障害等)の方は、外来での診療や生活指導を受け、気分や体調が回復したら、リワークデイナイトケアへの参加を開始します。
依存症の方は体力や集中力等の落ち込みは少ない場合が多いため、治療開始当初からリワークデイナイトケアの参加が可能です。

少しずつ集団になじみながら、関連する病気について学んだり、生活指導を受けて生活面を見直すことで、仕事に向けた体力や精神力を取り戻していきます。体力がつき、症状が安定したら、スタッフや仲間との交流を続けながら、自己分析したり、病気になった経緯を振り返ったりして、復職に向けた課題を洗い出します。課題が見つかったら、心理療法やグループワークを通して、課題の解決を図ったり、職場でのコミュニケーションや役割分担など必要なスキルを身につけていきます。こうして復職の準備が整ったら、いよいよ所属する会社の産業医の先生や人事の方と相談しながら、職場に復帰します。
依存症の方は病気の理解はもちろんですが、いかに再行動(再飲酒)しないよう対処できるか、再行動しないような職場・家族環境を整えられるかが治療の根幹です。「良くなった」「再発のリスクが少なくなった」と判断することが難しい疾患であるため、半年程度のまとまった治療期間を要することが多くなります。職場とご本人、当院間で復職に向けての流れ(本人がクリアすべき課題等)を共有しながら治療を進めていきます。

職場に復帰した後も、土曜日のフォローアッププログラムなどを利用して、医師や仲間と定期的に交流し、復職後の働き方のフォローを受けます。最終的に、再発・再休職に陥りやすい3ヶ月・半年・1年を経て、再発がなく、安定して働き続けられる状態を目指していきます。

 

治療プログラム

当院では、グループワークを中心にプログラムを構成しております。
生活習慣を整えたり、疾患について勉強したりなど、お一人でも復職に向けた準備は出来るかもしれません。ですが、職場は自分一人だけで仕事をするわけではありません。また、職場や家庭での対人関係から、症状に繋がっているケースも少なくありません。職場で最も必要とされているこれらの対人関係のスキルアップは、グループワークでなければ身につきません。

1週間のプログラムの例

9:00~10:30 朝礼・朝の健康チェック
10:30~12:00 オフィスワーク コミュニケーション
トレーニング
オフィスワーク チームワーク
トレーニング
オフィスワーク フォローアップ
ミーティング
12:00~13:30 昼食・休憩
13:30~15:00 (選択制)
卓球
和太鼓

ウォーキング
うつ研 (選択制)
ゲートボール
卓球
ボクシング
(選択制)
フラダンス
音楽療法
和太鼓
集団認知
行動療法
セルフ
リノベーション
フォローアップ
CBT
15:00~16:30 振り返り・個別面談・フリープログラム
16:30~18:00 グループ
ディスカッション
ディベート 心理教育
プログラム
ミーティング 振り返り
ミーティング
エノリックス
(依存症向け
認知行動療法)
(選択制)
絵画療法
スロージョギング

レクリエーション
18:00~19:00 夕食・活動記録
※プログラムは月ごとに変わります。
※デイナイトケアは9:00~19:00までです。昼と夜はお食事を提供しております。
主なプログラム

集団認知行動療法

物事に対する考え方や捉え方のクセに気づき、うつ病の再発予防に向けたセルフマネジメント・スキルを学んでいきます。
また、フォローアップ認知行動療法(飯田橋のみ)では、リワーク・プログラムを終了し復職された方を対象に毎週土曜日に行っています。リワーク中に学んできた認知行動療法を、実際に働いている中でどう実践していくのか、実践してみてどうだったか、というリアルタイムな修正を行っていきます。

うつ研(飯田橋のみ)

自分を事例化して発表し、事例検討をします。自分が抱えている悩みを外在化して発表し他者に受け止めてもらい、他の人の意見を取り入れることが出来ます。解決策をグループで検討することで、課題を他者へ相談して解決するプロセスから、より現実的な対処法を考えることにつながります。

セルフリノベーション(飯田橋のみ)

ディスカッション形式で進行し、復職までの流れや、復職後の働き方についてのイメージを固めていくプログラムです。治療→復職というプロセスを明確化し、復職へ向けた具体的な準備を行います。

コミュニケーショントレーニング

仕事上のさまざまな場面で具体的にどのようなコミュニケーションが適切かなどを、ロールプレイを通して練習します。
職場は共同作業の場であり、相手の話に耳を傾け自分の考えを正しく主張することが求められます。うつ病になった要因として対人関係の問題が圧倒的に多く、チームワークをとるにはどのようなコミュニケーションが有効で適応的なのかを改めて見直す必要があります。

依存症プログラム

依存症の方向けのプログラムは、依存症フロアにて「エノリックス=榎本式マトリックスプログラム(依存症向け認知行動療法)」「依存症勉強会・心理教育」「ミーティング」などのプログラムに参加して頂きます。エノリックスでは、どんなタイミングで再行動への欲求が湧き行動へ至るのかをシステマチックに分析し、対処方法を身に着けます。依存症勉強会では疾患に関する知識を身に着け、ミーティングでは自己の振り返りをしていきます。

多彩な運動プログラム

他クリニックでは見られない、和太鼓やボクシングといった多彩な運動プログラムをご用意しています。運動療法では、働き続けるために必要な「体力」だけでなく、技等が出来るようになるための「継続した努力」やその結果の「自信」、仲間と行うことによる「連帯感」等、様々な効果が期待できます。
・和太鼓では本物の和太鼓を使い、実際に発表の場もあり目標に向かって取り組めます。
・ボクシングでも、本物の革製のグローブやサンドバッグを用い、ボクシングジムへ出張して練習に行くこともあります。
太鼓やボクシングといった高度な技術を必要とする運動プログラムでは、プロの講師を招き、スタッフも格闘技等経験がある者が担当することが多いため、安心して参加できます。
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どのような人が利用しているの?

うつ・リワークデイナイトケアの利用者は、基本的にはメンタルヘルスに問題が生じて休職もしくは病休中の方を対象としておりますが、ご相談によりすでに退職された方でもご利用いただいております。

3. 企業の皆様へ

当院では、復職後の環境に合わせた治療方針の検討や、より適切な復職時期・環境の調整、復職後の再発予防のために、企業の産業保健スタッフや人事部のご担当者様との連携を行っております。

<主な連携のタイミング(例)>
・受診前の相談
・当院通院開始時期の治療方針設定
・定期的な治療経過の報告
・復職直前
・復職後のフォローアップ 等

復職期限が近くて通院の期間が短くなってしまう、リワークの対象となるのかわからない、会社やクリニックで本人・治療者を交えてカンファレンスを行いたい、産業保健スタッフ・人事部だけでまず見学がしたい等、ご相談がございましたらお気軽に電話やお問い合わせフォームよりご連絡下さい。